
経営難に陥ったゴルフ場経営会社が破産する場合、会員など多数存在する関係者への対応や、最大の資産であるコースの維持管理、高額な予納金の確保など、ゴルフ場特有の注意点があります。事業譲渡などでゴルフ場自体を残す方法とも併せて弁護士が解説します。
事業整理を考えているゴルフ場経営者の方へ

一時は多数の会員を抱え、隆盛を誇ったゴルフ場も、時代の変化とともに経営が苦しくなることがあります。
経営を続けるほどに赤字が膨らんでいくにもかかわらず、継続して通ってくれている会員に迷惑はかけられないとの思いから、資金繰りの悪化を押して経営を続けてしまう方もいるでしょう。
しかし、ゴルフ場の場合、いざ事業を閉じるとなれば、規約に従った預託金の返還をしなければなりません。
また、債務超過かつ支払不能の状態にあるのであれば、破産申立てを行う必要がありますが、そのためには高額な手続費用が必要となります。
こうした費用を捻出するだけの余力はあるでしょうか。
資金や資産が完全に枯渇してしまってからでは、破産申立てなど適切な倒産処理をするための費用すら工面できず、かえって会員や債権者などの関係者に迷惑をかけてしまいます。
そこで、限界を迎える前に、破産申立ての費用(弁護士費用や裁判所への予納金)を確保した状態で、事業を停止し、弁護士に破産申立てを依頼します。
その後の破産申立ては、ゴルフ場経営会社ならではの特殊性に注意して進めることが必要です。
ゴルフ場であるがゆえの破産の特殊性

ゴルフ場を経営する会社が裁判所に破産申立てを行う場合、一般的な企業の破産とは異なる、ゴルフ場特有の注意点が存在します。
具体的には、
① 会員(預託金会員・プレー会員)への対応と混乱の防止
② 営業停止のタイミングと前受金の取扱い
③ コース(芝生)の維持管理と資産価値の保全
④ 高額な予納金の確保
に注意を払って進める必要があります。
以下、詳しく見ていきましょう。
注意点① 会員(預託金会員・プレー会員)への対応と混乱の防止
ゴルフ場経営会社の破産で、最もトラブルになりやすいのが会員への対応です。
特に、預託金会員が持つ預託金返還請求権は、原則として、破産法上「一般破産債権」となり、規約に従った返金ができなければ、その会員は債権者として扱われます。
しかし、ゴルフ場経営会社が破産する場合、負債総額が極めて高額になることが多く、その一方で会社資産として残っているものは少ないでしょうから、預託金返還請求権を持つ会員が配当を受けられる可能性は極めて低くなります。
また、ゴルフ場経営会社が破産すれば、会員の持つゴルフ場会員権の価値はほとんど無価値になってしまいます。
このような実情を会員が知れば、現場が混乱することは必至です。
破産の噂が事前に漏れると、会員がゴルフ場に押し寄せたり、備品を持ち出したりするなどの取り付け騒ぎが起きる可能性も否定できませんので、事前の情報漏洩を防止することも重要です。
Xデー(営業停止日・破産申立日)直前まで、情報は慎重に秘匿しなければなりません。
注意点② 営業停止のタイミングと前受金の取扱い

現場の混乱を最小限に抑えるため、営業停止のタイミングも慎重に見極める必要があります。
そのうえで、「前日まで通常通り営業し、当日朝にクローズして、即日裁判所に破産を申し立てる」のが倒産実務の定石です。
なお、営業停止の直前まで予約を受け付けたり、年会費やコンペの預り金を徴収したりしていると、後に、「経営破綻を知りながら、お金を騙し取った」として、厳しく責任追及されるリスクがあります。
申立て直前の現金収受には細心の注意が必要です。
注意点③ コース(芝生)の維持管理と資産価値の保全
ゴルフ場にとって、コース(芝生)は最大の資産です。
営業を停止したからといって、水やりや芝刈り、薬剤散布を完全に止めてしまうと、わずか数週間で芝が枯れ、ゴルフ場としての価値が完全に失われてしまいます。
破産手続きの中で、適正価格で売却換価するためにも、最低限、コースの維持管理は継続する必要があります。
そこで、破産管財人に引き継ぐまでの間、コースの維持管理を誰が、どのような方法で行うか(特に、最低限の維持管理にかかる費用をどこから捻出するか)、事前に計画しておかなければなりません。
注意点④ 高額な予納金の確保
ゴルフ場経営会社が破産を申し立てる場合、他の法人破産の場合と同様、確実に管財事件となります。
しかも、ゴルフ場経営会社の場合は、債権者(会員や取引先)が数百から数千人規模になるため、裁判所に納める予納金(管財人の費用など)も数百万円から数千万円規模になるケースがあります。
そこで、こうした高額な予納金をどのように確保するかを考えておく必要があります。
会社の手元資金が完全に底を突く前に、高額な予納金と弁護士費用を確保しておかなければ、破産申立て自体ができなくなります。
具体的な対応方法と段取り

混乱を最小限に抑えつつ破産申立てを行うために、ゴルフ場経営会社が破産する場合の具体的な対応方法・段取りは、おおまかに言って次のとおりです。
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- 01弁護士への相談
- SEO倒産実務、特にゴルフ場の倒産(民事再生や破産)に精通した弁護士に一刻も早く相談します。
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- 02資産・債権者データの整理
- 会員名簿(預託金額、住所・連絡先など)、借入れのある金融機関や担保権の有無、一般取引先など、会社の債権者を正確にリスト化します。
併せて、会社の資産(不動産、預貯金、自動車、什器備品、保険契約など)についても、全て洗い出し、リスト化します。
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- 03Xデー(営業停止日・申立日)の決定
- ゴルフ場の営業を停止し、裁判所に破産申立てを行う日を依頼する弁護士と慎重に決定します。
通常は月曜日など、週末の営業が終わった直後が選ばれることが多いようです。
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- 04Xデー当日の現地での動き
- 朝、出勤した従業員に事情を説明して解雇通知を交付するのと同時に、クラブハウスの入口に営業を停止し、地方裁判所に破産申立てを行う旨を記載した告知書を貼り出します。
事務所・クラブハウスは施錠(閉鎖)し、会社所有の自動車の鍵も弁護士に渡します。
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- 05裁判所での破産開始決定・管財人の選任
- 裁判所で開始決定がなされると同時に管財人弁護士が選任されます。
その後は速やかに、破産管財人に対して、現金、帳簿、鍵、会員データ、コース管理の引き継ぎを行います。
もう1つの選択肢としての民事再生

以上に見てきたような破産の申立ては、ゴルフ場としての営業を一切やめたうえで、その時点で会社が有していた資産を破産管財人が売却換価し、債権者に配当・分配するという手続きです。
しかしながら、もし、「ゴルフ場そのものは残したい」、「スポンサーを見つけて営業を続けさせたい」という意向がある場合には、破産ではなく、民事再生という別の手続きを選択する道もあります。
破産の場合、原則としてゴルフ場を残すことはできなくなりますが、民事再生であれば、会員のプレー権を一部保護しつつ、別会社に事業譲渡してゴルフ場を存続させられる可能性が残ります。
この場合、事前に事業を引き継いでくれるスポンサー候補を見つけておき、裁判所に民事再生を申し立てます。
会社を再建するのではなく、「事業をスポンサーに売却し、その代金で債権者(会員や取引先など)に配当を行い、旧会社は清算する」というスキーム(清算型)をとるのが一般的です。
清算型民事再生のメリット
裁判所の関与のもとで事業譲渡ができるため、透明性が高く、後から債権者に文句を言われるリスクが低くなります。
また、預託金(会社の側からみれば負債です)は大幅にカットされますが、スポンサーの意向次第で「預託金は返せないが、引き続きメンバーとしてプレーできる権利(プレー権)は保証する」という条件をつけやすく、会員の理解を得やすいのもメリットです。
清算型民事再生の注意点
申立て前に、水面下でスポンサーを見つけ、基本合意を結んでおく(プレパッケージ)など、高度な事前準備と秘密保持が必須です。
ゴルフ場運営に特化した企業へ水面下で打診し、引き受けの可能性を探ります。
スポンサー候補が見つからなければ、この方法は取ることができません。
破産してもゴルフ場自体を残すには

上記でご紹介した民事再生の方法を取ることができず、破産申立てをするしかないとしても、「地域経済のためにも、会員の皆さんのためにも、ゴルフ場だけは何とか残したい」と考える方もいらっしゃるでしょう。
破産の場合であっても、次のような方法によって、ゴルフ場自体は残せるかもしれません。
破産管財人による事業譲渡
破産手続きの中で、裁判所から選任された破産管財人に、ゴルフ場を別の会社に売却してもらう方法です。
会社の資金繰りが完全にショートしており、民事再生の準備をする時間的・資金的余裕がない場合に有効と言えます。
ただし、破産した時点で、会員の権利(プレー権含む)は法的にすべて消滅します。
ゴルフ場を買った会社が、その後、旧会員をどのように扱うかは、その会社の自由です(安価な登録料で再入会を認めるケースもありますが、完全な新規オープンとして旧会員を切り捨てることも可能です)。
このため、会員からの反発が大きくなることも予想されます。
申立前の事業譲渡 + その後の破産申立て
裁判所に破産を申し立てる前に、優良な事業(ゴルフ場施設や運営権)だけを別会社に売却(事業譲渡)し、旧会社には負債(預託金返還債務や貸金債務)と売却代金だけを残して、その後に旧会社が破産する方法です。
裁判所での手続きに入る前にゴルフ場の存続を確定できるため、事業価値(ブランドや従業員)の棄損を防ぐことができます。
ただし、適正な価格(時価)で売却しないと、後になって債権者や破産管財人から、「財産隠しだ」「安値で売って債権者を害した(詐害行為)」と主張され、譲渡自体を裁判で取り消される非常に高いリスクがあります。
この方法を取るには、不動産鑑定士による適正な評価や、専門の弁護士による緻密な適法性の担保が不可欠です。
ゴルフ場経営会社の破産申立ては是非弁護士に相談を

多くの会員に愛され、長年地域経済に貢献してきたゴルフ場が、経営難を理由に事業を停止し、破産申立てを決断することは大変につらいことです。
しかし、先に述べたとおり、資金や資産が完全に枯渇してしまってからでは、破産申立てのための費用すら工面できず、かえって関係者の方々に迷惑をかけてしまいます。
適時に、適切な判断をすることで、関係者にかける迷惑を最小限に抑えながら、事業を閉じることは可能です。
まずは、「いつまでに資金がショートするか」のタイムリミットを確認し、手遅れ(芝の枯死や従業員の散逸)になる前に、一度、我々弁護士に相談して下さい。
方針としては破産なのか民事再生なのか、ゴルフ場は残せるのかどうかを含めて、アドバイス致します。
当事務所では、これまで多くの法人破産の申立てをお手伝いしてきました。
経験豊富な弁護士がサポート致しますので、一人で悩まずに、是非お声掛けいただければと思います。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。
この記事を書いた弁護士:弁護士 田中 智美
法人破産
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成20年登録後、個人の債務整理にとどまらず、数多くの法人破産の申立てを手掛ける。埼玉県内に本社を有する法人だけでなく、近隣都県の法人の申立てに対応。負債総額、債権者数、従業員数、支店の数などが多数にのぼる大型案件についても実績があり、裁判所の運用や処理にも精通している。








