主な管財業務の内容

申立代理人において、廃業処理や売掛金の回収がかなり実現されていたため、引き継いだ破産財団は、比較的多額でした。
そのため、当初から、租税債権と労働債権者への配当は、ある程度可能と見込まれる事案でした。

ですが、廃業直前、事業を譲渡したり、親族への自動車の名義移転、車検切れ車両等があったので、慎重な管財業務が求められました。
まず、親族や従業員への自動車については、否認権行使をして返還請求をしても名義変更に費用が掛かることから、迅速な解決を図るため、適正妥当な価格を財団に入金してもらうことにしました。これは、自動車査定協会に査定してもらいました。
また、車検の切れた会社名義車両については、元従業員に売却することにしました。これは、査定するほどではなかったので、価格をレッドブックなどで検討し、交渉して妥結した金額で売却しましたが、売却の相手方は個人でしたので、名義変更の資料を整える等の配慮をする必要がありました。
最も慎重に対応したのは、事業譲渡でした。
事業譲渡の裏付けとなる資料を集めた上で、事業の譲り受けをしたと評価できる会社にその旨通知し、財務資料を提出してもらいました。
結果的には、税理士に価値が無いと診断され、事業譲渡の対価請求はしないこととしましたが、破産を検討している時期の事業譲渡については、慎重な対応が求められることを改めて感じました。
その他には、廃業届を提出したり、従業員に対する貸付金の回収を行うなどして、約1年で終結しました。

経過

上記のような主な管財業務のほか、廃業届を提出したり、従業員に対する貸付金の回収を行うなどして、約1年で終結しました。

本事例の結末

租税債権者には全額を、労働債権者には50%超の配当を実現できました。

本事例に学ぶこと
管財人としては、申立代理人の処理が適正であったことから、比較的スムーズに進めることができました。
親族への自動車名義変更、事業譲渡などについては慎重に進める必要がありましたが、これらについても丁寧に資料を集めた結果、特段トラブルなく、解決することができたと思います。
管財業務は、スピードとともに丁寧さが求められる業務であることを、改めて痛感した事案でした。