依頼内容
夫が県外で事業をしていたが病気で突然亡くなってしまった、銀行等から連絡がされているが自身で事業を継続することが困難であるため、大きな負債があるのであれば破産方向で会社を畳みたいとのご相談でした。
税務資料からは会社に相当程度の負債があることが確認できたため、配偶者を代表者とした上で破産手続の代理人として受任しました。
負債状況
7000万円弱
資産状況
不動産(工場)、自動車、預金、フォークリフト、什器備品等あり
方針・事件処理の結果
県外の工場に出向き、手続に協力的であった工場長から事業の現状について確認を行いました。
工場では取引先から依頼を受けた製品の加工・組立て・塗装等の作業を行っていました。外国人派遣労働者を受け入れており、自社の従業員も存在するという状況でしたので、事業停止日を想定した上でまずは派遣関係や雇用関係の整理を行うこととしました。
並行して工場や自動車等の財産関係の査定を進め、工場の稼働停止を前提として債権者に受任通知を発送しました。
工場内には取引先から納入された部品が残されていましたが、預り品については取引先に引取りを依頼しました。
工場の土地建物の価値がどの程度になるかという問題はありましたが、それを除けば会社は債務超過の状態にあったため、工場自体の売却は破産管財人に委ねることとし、その他の売却可能物品及び派遣を含む従業員関係の処理が済んだ段階で裁判所に破産手続の申立てを行いました。
破産手続開始後、破産管財人が工場を売却したところ、その他の財産をあわせ負債を超える財団が形成されたため、破産手続においては債権者に対して100%の弁済を行うことができました。
本事例に学ぶこと
代表者が突如亡くなり事業を継続することができなくなるというケースは珍しくありません。
残された家族が事業の内容を把握していない状況であると、その後の手続は書類から必要な項目を探し出して対応するということになり、破産手続申立てを行うにしても困難が伴います。
また、今回のケースでは代表者の配偶者は会社の保証債務の引継ぎをしないうちに破産手続申立てに移行したため自身が破産手続の申立てを行うということにはなりませんでしたが、保証債務の引継ぎを行った後に会社が破産となると自身も破産手続の申立てを余儀なくされる可能性があります。
弁護士 榎本 誉
弁護士 吉田 竜二
弁護士 木村 綾菜