依頼内容
パチンコ店に中古の筐体を供給する会社を営んでいたが、コロナ禍の影響でパチンコ店が営業できなくなり筐体の供給がストップしてしまった、その後は給付金や借入れ等で何とか凌いできたが、最も売上げをあげていた取引先が仕入台数を半数近くにする予定であるということが判明し、これ以上は事業が継続できないと判断したとのご相談でした。
近い将来、パチンコ業界が急成長しその他の取引先で売上げを回復できるという見通しもなかったため、保証債務を負っていた代表者含め自己破産手続申立ての代理人として受任しました。

負債状況
2億円弱

資産状況
在庫筐体は既に処分済み、賃貸物件である工場内のフォークリフト、自動車等
代表者については自宅あり

方針・事件処理の結果
債権者に受任通知を発送するのと並行して筐体の保管等のため借りていた倉庫の明渡準備に取り掛かりました。
倉庫内の筐体は既に処分済みであったため、多くの物品が残っているという状況ではありませんでしたが、転売のきかない机等が残るほか、筐体を移動するために使っていたフォークリフトが倉庫内に保管されていました。
机等については廃棄業者を手配し、フォークリフトについては見積りを取得した上で高値をつけた買取業者に売却しました。
自動車については代表者の自宅に保管場所があったため、取り急ぎ、代表者の自宅に移動しました。
比較的早期に倉庫の明渡しが済んだため、自動車の売却は代表者の自宅の処理とともに破産管財人に任せることとして、破産手続申立てのための書類収集等を進めることとしました。
破産手続申立後、破産管財人が自動車を買取業者に売却し、代表者の自宅については親族が買い取るという処理で落ち着きましたので、法人・代表者ともに一定の財団を形成することができました。
法人については2.5%程度、代表者については3%程度一般債権者への配当を実施し破産手続は終了となりました。

本事例に学ぶこと
賃貸物件が存在する法人破産の場合、その明渡しを最優先で行う必要があります。
今回のケースでは倉庫内の物品があまり多くなく、貸主が倉庫内の造作について完全な撤去を求めてこなかったため、比較的早期の段階で明渡しを実現することができましたが、事案によっては明渡しの程度について貸主借主との間で齟齬がある、または、明渡し費用を準備できない等として明渡しに時間がかかることもあります。
賃貸物件明渡し未了のまま破産手続が開始された場合、開始後の賃料等については財団から優先的に支払わなければならないことが多く、その分他の債権者に対する配当原資が少なくなるということになります。
法人破産をお考えの場合は手元に一定の資金が存在する状態で前もってご相談いただくことをお勧めいたします。

弁護士 吉田 竜二