当事務所では、法人破産の相談はまず、電話相談を受けます。その後、資料を用意していただくなどして、ご来所での相談予約を入れていただき、経営する会社法人の状況などを徴取し、その負債の状況や資金繰りの状況から、当該法人は破産やむなしとの見立てとなりましたら、具体的な法人破産のご依頼をいただきます。

ご依頼前には、仮に、当事務所が相談者の会社法人の破産申し立てをする場合には、どのように会社をたたんでいくのか、そして、破産申立ての準備を進めていくのかなど、そのスケジュールをご説明し、そのスケジュール感を共有してもらうことになります。

会社法人の経営者の方が当事務所に相談する場面からご説明します。

1 弁護士への相談

(1)当法律事務所への電話相談の申込

法人破産の手続は、まず、弁護士への相談から始まります。

当事務所では、まず、10分間ほどの電話相談を受けていただきます。

会社経営者の方から、法人破産の電話相談を希望する旨の電話が入った場合には、当事務所の法人破産チームの所属弁護士が在籍すれば、直ちに配転されます。

(2)電話相談において確認する事項

電話相談を申し込まれた経営者の方から、下記の事情をお聞きします。

① 貴社の本店所在地、その他の事業所の有無、所在地

破産申立を行う管轄裁判所を確認するためです。

② 事業内容

当該事業特有の破産に至る原因、事業廃止の特殊性の検討をつけます。

③ 経営に行き詰り、支払い困難な負債を抱えるに至った事情などの簡単なご説明

資金繰りに窮しているからこその電話相談ですが、そもそもの原因をお聞きします。

④ 債務の内容とその金額(金融機関からの借り入れ、仕入れ先への支払い、リース料など)

どのような債務を負っているのかを確認し、当該事業に特有の債権者の有無なども聴取します。

⑤ 従業員の有無・人数、賃金の支払い状況

法人の破産となれば、従業員全員を解雇することになります。

当該企業の雇用人員や雇用形態を確認します。

最近では、外国人労働者の有無・言語の問題も聞き取ります。

解雇の時期、解雇予告手当、労働者健康福祉機構による未払賃金の立替払制度利用を視野に入れるかなども検討します。

⑥ 会社の資産の状況(不動産の有無、売掛金の有無、金融資産の有無など)

会社の資産(在庫商品、不動産、預貯金、保険解約返戻金など)はすべて売却や換価することになります。

破産手続においては、すべてを換価し、債権者の配当に充てられますが、その前に、破産申立の費用(弁護士費用、管財予納金など)の工面の問題にもかかわります。

⑦ 事務所・事業所等の賃借の有無

事務所・事業所・倉庫・駐車場などを賃借している場合、破産申立前に立退きが必要となります。

申立て前(遅くとも破産手続開始決定前)に実現しておかないと、管財予納金の増額(負担)が不可避となるため、その見当をつけるためです。

⑧ 代表者の連帯保証の有無

代表者が法人の債務を連帯保証していることがほとんどですが、その総額を確認することにより、代表者が住宅ローン特則付き個人再生手続きの利用を希望している場合の、その適用の有無を判断することにつながります。

経営する法人の破産申立により、代表者も自己破産することが不可避となる場合があります。

2 来所でのご相談

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(1)ご持参いただきたいもの

電話相談とは異なり、ご予約を受けて、少なくとも1時間枠での相談対応をとっています。

その際に、ご持参いただきたい資料は、次のようなものです。

ご来所相談にいらっしゃる会社経営者の方からのご依頼を受けるつもりで、弁護士は相談に臨んでいます。よって、そのつもりでご準備していただいております。

(2) 必須のもの

直近2期の決算書・確定申告書の持参してもらいます。

よって、誠に申し訳ございませんが、無申告企業の経営者の方の相談はお受けできない場合がございます。

また、税務申告の意欲がある経営者の方には、それを踏まえてのご相談をしています。

(3) 資金繰り表

当該企業の資金繰り表(返済予定表など)のご準備があると、資金ショートの時期の見立が可能となり、法人破産のご依頼を受けて、債権者への受任通知(支払停止)の時期を段取り、また、従業員に対する即時解雇の時期、その説明段取りをすることになります。

3 法人破産申立のご依頼のご決断

法人の経営者の方に、当該法人の破産申立てやむなしとして、その債務整理方針として、法人破産申立の手段によることにご納得いただきましたら、そのご依頼をいただくまえの、当事務所への依頼の弁護士費用のご説明と、破産申し立てをする裁判所に手続費用として納める必要がある予納金をご説明し、そのご負担を納得していただきます。

この申立手続の代理人弁護士費用や破産手続の管財予納金などの申立費用がご準備確保できない場合には、残念ながら、破産手続の申立て準備に着手することがかないません。

下世話な表現ですが、「お金がなければ、破産もできない」のです。

4 法人破産申立費用の捻出

法人の経営者の方には、申立費用のご準備をお願いしております。

そのためには、これまで次の方法でご準備いただいたり、その準備を整えてのご相談、ご依頼された会社経営者の方がありました。

(1)会社財産からの捻出

法人の現預金、売掛金の回収予定額(とその時期)

(2)会社財産の換価金による捻出

売掛金の入金も十分には見込めない場合、会社法人が保有する資産(これまでの案件では、トラック、観光バスなどがあります)を換価してねん出した場合があります。

(3)代表者の個人資産からの捻出

代表者の預金、保険解約返戻金からねん出したことがあります。

代表者の所有の不動産の売却資金による捻出もあります。

既に換価し、残ローンを支払った手残り資金で賄った方、事業用不動産を代表者が保有し、相見積もりをとり、高額売却を経て、手持ち現金としてから、費用を工面した方があります。

(4)親族の援助

代表者の方の親族の援助により、弁護士費用を含む申立費用を工面される方もあります。

(5) 借入による工面は許されるか。

破産申立の費用であることを比して、借り入れることは詐欺に該当します。

破産手続をとるための費用であると知っていれば、融資をした方は当然貸すはずはなかったからです。

よって、破産申立費用を借り入れで賄うのは厳禁としています。ご了解ください。

5 従業員への解雇通告、各債権者への受任通知の発送日の確定

法人破産やむなしとなる企業は、資金繰りに窮しています。

その場合でも、次の点を確認して、法人破産申立準備の外部への表明時期を決定します。

これを「Xデイ」をいつにするかという表現をして、代表者と確定します。

(1)従業員関係

当該企業において、従業員への未払い賃金の有無、解雇予告手当資金の有無を確認します。

給与については、上述の、立替払制度がありますので、その利用を当然に視野に入れます。

しかし、提供した労働の対価ではない、解雇予告手当は上述の立替払制度の適用がないため、失業保険給付を受けるまでの、従業員の生活保障のために解雇予告手当の工面が重要になります。

(2)税金関係

当該企業において、税金の滞納の有無、分割納付の履行状況の有無を徴取します。

税金の滞納がある場合には、税務当局からの滞納処分の差押えの危険を常に意識しなければなりません。

令和5年12月に依頼を受けた企業の法人破産の関係では、分割納付の約定で支払っていた滞納税金の納付を怠っていたために、当事務所依頼後まもなくして、売掛金の債務者への滞納処分の差押えが入り、予定していた売掛金が回収できなかったことがありました。

(3)支払期限を遵守した支払いはいつまで可能か。

資金繰りに余裕があっても、どの段階までの支払が可能かは、債権者毎の支払期限を確認してもらう必要があります。

借りに余裕があっても、全額弁済が不可能だから、法人破産を選択するのですから、期限前弁済をする義務は債務者である会社法人にはありませんので、その会社財産は、他の債権者の按分弁済にするほかありませんし、債権者に応じた平等弁済は破産管財人の手による配当によって実現してもらうことが最適となります。

期限前弁済を受けた取引先債権者に無用の迷惑をかけないためにも、あえて、一部といえども支払をせず、受任通知を発して、支払い停止を表明するのが正当な振る舞いとなります。

6 申立の準備への移行

このように、まずは、従業員対応の時期を見極め、他の債権者への受任通知の発送時期を見極めて、そのスケジュールを依頼者である会社法人の経営者にも共有していただいて、破産申立のご依頼を受け、その後の破産申立の準備に移行します。

法人代表者の方には、強硬な債権者への対応は依頼した弁護士にゆだねてもらい、破産申立準備の資料収集や、賃借物件の退去明渡作業、リース物品の引き揚げ作業への立ち合いなどに注力してもらいます。

ご準備いただくことを指示しますので、その指示に基づき、粛々と、そして愚直に準備していただけますと、円滑な申立につながります。

管轄裁判所への破産申立は、破産申し立て予定会社の代表者の方と、申立ての専門家である弁護士との共同作業となります。

ご不明な点については丁寧にご説明申し上げますので、ご理解ご協力をお願いします。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 榎本 誉

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