事案の概要

所属していた美容室から独立し数店舗を構えたが、徐々に売り上げが落ち込み、店舗を順次整理していくも最終的にはすべての店舗を閉鎖し代表者が清算業務を中途まで行ったという事案について破産管財人に選任されました。

主な管財業務の内容

法人については代表者が個人の収入から残債の返済作業を行っていたという状況でしたので特段換価可能な財産は存在しませんでした。
代表者にもめぼしい財産は存在しませんでしたが、破産手続申立以前に所有する不動産を元配偶者に任意売却していたため、問題視すべきか否かの調査を行いました。
売却価格は事後的に取得した査定価値よりも高いものであり、売却代金の使途も担保権者への支払いや破産手続申立費用といったものですべてであったため、他の債権者との関係で不当性はないと判断しました。

本事例の結末

法人については財団形成がなされず初回の債権者集会で破産手続廃止となりました。
代表者についても自由財産拡張の処理により予納金以外の財団が形成されなかったため、法人同様、破産手続廃止となりました。代表者の負債は法人の保証債務等が主であったため、免責手続において免責不許可事由なしとの意見を提出しました。

本事例に学ぶこと

破産手続申立前に所有する不動産を処分した場合、事後的にその処分の是非について問題となる可能性があります。
不動産を廉価で売却しないこと、売却代金の使途については事後的に説明をすることができるよう資料等を残しておくこと等が重要となりますので、やむを得ず、破産手続開始を待たずに不動産を売却するという場合には、最低限それらのことを念頭に置いて行うべきと思われます。

弁護士吉田竜二