紛争の内容

住宅関連工事会社の代表者の方からご相談を頂きました。先代の代表者から代表者の地位を引き継いだのですが、その時点で多額の累積赤字を抱えており、その後、無駄な在庫品を抱えないようにする等の経営努力をしたものの、従業員の退職が多く、人手不足となり売り上げが下がっていったということから、現代表者の方が破産の申立てを決断されました。

交渉・調停・訴訟などの経過

ご依頼を頂いた後、店舗の閉鎖作業に向かいましたが、営業停止を聞きつけた取引先の方が事務所に押しかけ、代金の支払いを強く要求してきました。破産の申立てをする以上は、一部の債権者の方だけに返済を射することができないことを説明して、支払いを拒否しました。
その後、取引先をはじめとする各債権者の方に通知を送りましたが、代金を払えていない業者がいくつかあり、代金の支払いがなくて困るということを伝えられました。この時もまた、破産の申立てをする以上は、一部の債権者の方にのみお支払いをすることはできないということを説明して、支払いを拒否しました。
営業停止までに売掛金等の財産の回収はほとんど完了しており、営業停止時に、会社の帳簿類等も回収し、速やかに賃借していた事務所を明け渡しました。
その後、1か月程度で裁判への破産の申し立てを行いました。

本事例の結末

申し立て後、破産管財人と面談を行い、決算書の内容に関する質問を受け、それに対して回答を行いました。申し立てから約7か月後に債権者集会が開かれ、その時点までに破産管財人の方で、滞納税金の支払い等の支払いを行って、破産手続きを終了させる方針を述べ、その後、これらの支払いを破産管財人が行って破産手続きは終了しました。

本事例に学ぶこと

最近まで営業を続けていた会社が、取引先に代金を支払えていない場合、取引先からの不満の連絡が多く届きますので、弁護士はそのような事件であることを理解したうえで、債権者の方々には、破産手続きにおいて一部の債権者だけに優先的に支払いをすることが破産法上許されないためにお支払いが難しい旨をお伝えする必要があります。本事例においてはこのことを強く学びました。

弁護士 村本 拓哉