A株式会社はいわゆる建設業者で、自治体からの公共工事も請け負っていました。従業員は14人でした。
しかし、公共事業削減など、業界全体の景気落ち込みの影響を受け、売上が減少、運転資金の返済に困窮するようになりました。
破産申立を弁護士に依頼したときの負債総額は約3億7000万円、債権者数は約90でした。

残念ながら売り上げが低迷していた状態での破産申し立て依頼でしたので、仕掛中の現場がほとんどありませんでした。
但し、営業が継続している中で破産手続の依頼を受け、ある日突然営業停止をすることになりましたので、破産手続申立ての依頼を受けた日に従業員を解雇せざるを得ず、従業員の方々のショックや不安は大きいものとならざるを得ませんでした。
従業員の方々に対しては、速やかに破産手続を申し立てること、破産手続の中で未払い賃金は優先的に配当されること、配当の前に労働者健康福祉機構(未払い賃金を立て替えてくれる独立行政法人です。現在は、労働者健康安全機構と名を変えています。)から未払い賃金の立て替え制度があり、破産手続開始決定後に選任される管財人に速やかな立て替え申出を依頼することなどを説明し、可能な限り、従業員の方々のショックや不安を解消できるようにしました。
また、同時に、建設機械やトラックの保管場所である駐車場の施錠を厳重にして告知文を貼り、財産の保全をはかるとともに、行政への各種届出を行いました。

こうして、財産の保全措置をした上で、依頼を受けて1カ月半程度で裁判所に破産手続申立てを行いました。
事前に、裁判所に対して、問題点や管財業務の見通しなどを伝えていたことから、申立て後速やかに裁判所から破産手続開始決定が出され、管財人も決まりました。
管財人との面接では、従業員への未払い給与があることから速やかに労働者健康福祉機構(未払い賃金を立て替えてくれる)への立替手続をとってほしいことなどを伝えました。

その後、何度かの債権者集会を経て、破産手続は終結しました。
A社については、本社ほかの不動産、トラックや建設機械、保険などの財産がありましたが、管財人が売却し、抵当権付きのものは一部を破産財団に組み入れてもらい、抵当権の付いていないものは売却代金を破産財団に組み入れ、その組み入れ財産で配当を行いました。

A社の破産手続は、法人破産としては標準的な期間と考えられる、1年少しで終結しました。